賃貸物件で火事・火災が起きてしまったときの対応や責任は?
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所有している物件が事故物件になってしまった場合、適切な対応を行い、被害を最小限に抑えなければなりません。しかし、実際にはうまく頭が回らず困ってしまう大家さんも少なくありません。そこで今回は、所有する物件が事故物件になってしまった場合の対処法や、気になる告知義務・損害賠償請求などについて解説していきます。
目次
事故物件とは、自殺・他殺などなどによって人が亡くなったことがある物件のことを指します。以前はこの事故物件には明確な定義はありませんでしたが、2021年10月8日に国土交通省が制定した、事故物件に関するガイドラインで「自然死や不慮の事故死以外の死」や「特殊清掃が必要になる死」が発生した物件のことと定義付けされました。
つまり、物件内で事故死や不慮の事故などで亡くなってしまった場合は、事故物件には該当しません。しかし、発見が遅くなり、腐敗が進んでしまったり特殊清掃が発生してしまった場合は、たとえ老衰であっても事故物件として取り扱いすることになります。
所有物件での事故発生は、主に「入居者の家族が気づく」「同じ物件に住む住人が気づく」といった2つのパターンで発覚します。まずは管理会社が連絡を受け、その後大家さんに一報が入ります。入居者の生存確認をするべく、管理会社が警察への連絡など対処してくれることになりますが、その後は以下の手順で対応していくことになるでしょう。
以下の内容について保証人や遺族へ連絡します。
・滞納家賃
・損害賠償の有無
・賃貸借契約の引き継ぎ
・解約手続き、敷金の残額など
病死や孤独死など亡くなった原因によってはつらくなってしまうかもしれませんが、入居者が亡くなった場合でも賃貸借契約は継続されるため、これらは必要な対応となります。
次の入居者を募集するためにも、発見が遅くなったり、事故が発生した部屋のフローリングや壁紙、バスルームなどを清掃します。このような事故物件の場合、専用機器を使っての清掃・消臭・消毒の他、遺品整理まで行ってくれる特殊清掃業者に依頼することがほとんどです。
自殺・他殺の場合には、次の入居者を見つけるのが難しくなるケースも多いです。このようなリスクを少しでも下げるために、お祓いを行うこともあります。
お祓いの依頼をする際の宗教・宗派は特に問われませんが、法要の証明として写真を撮影しておくと良いでしょう。なお、お祓いは強制ではないため、大家さんの意向で実施の有無を決めましょう。
特殊清掃が完了したら、物件のイメージ回復のためにリフォームやリノベーションをするケースもあります。「フローリング・畳・壁紙・バスルームなどが新しいものに変わっていれば事故物件でも許容範囲」という入居者もいます。また、特殊清掃をしても時間が経つとニオイが戻ってきてしまうケースもあるため、ニオイ対策としてもリフォームやリノベーションの実施はおすすめです。
ただし、リフォームやリノベーション後でも、死因によっては次の入居者への告知は原則必須です。
上記でも軽く触れましたが、あらためて「事故物件になってしまったときの告知義務」について解説していきます。国土交通省が令和3年に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、以下のように定義されています。
新規の入居者に対して事故物件に関する告知義務が発生するのは、主に「自殺や他殺があった場合の事件から3年以内」「死亡事案の経過期間や死因にかかわらず入居希望者から問合せがあった場合」「社会的影響の大きさから入居希望者に知らせた方が良いと判断した場合」の3つです。亡くなった方やご遺族のプライバシーに配慮し、死亡場所・死因・特殊清掃の有無についてのみ告知します。
※参考 国土交通省 「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
一方、事故物件に関する告知をしなくても良いのは以下のようなケースです。
・病死・孤独死・老衰による自然死
・日常生活上での不慮の事故による死亡(転倒事故など)
・自殺や他殺であっても事案から3年間が経過した場合
・死亡事案の発生場所が集合住宅の共用部分や隣接住居の場合
ただし、仮に3年間経過しても異臭騒ぎなどで発覚した場合、そのときは告知が必要とされています。
所有物件で入居者の死亡事案が発生した場合でも、その部屋の周りに住んでいる既存入居者への説明義務はありません。死亡事案の経過期間や死因にかかわらず、既存入居者から問合せがあった場合は、誠実に対応する必要はあるでしょう。
ただし、大家さんの意向で説明していない場合でも、間に入っている管理会社が既存入居者へ告げてしまいトラブルとなるケースもあります。いずれにせよ、事故物件の扱いは管理会社と連携して行うのがポイントです。
また、事故物件に関する告知義務は、人付き合いが薄い傾向にある都心部と、深い近所付き合いをする郊外では認識が異なる場合もあります。都心と郊外では「告知すべきかどうか」「告知の範囲」などが変わってくる可能性がありますので、エリアによって合わせる必要があります。
事故物件となってしまった場合、大家さん側としては、特殊清掃による出費・家賃収入の低下・家賃の値下げによる損害といった金銭的なトラブルを被ることになります。これらの損害は、死亡の理由や状況によって損害賠償を請求することが可能です。
たとえば死因が故意による自殺の場合、大家さんから保証人に対して「特殊清掃費用」「原状回復費用」「家賃の値下げによる損害賠償」などを請求できます。一方、死因が病死・孤独死・病死・不慮の事故の場合には、故意によるものではないことから、損害賠償請求は認められないことがほとんどです。最近では「孤独死保険」という大家さん向けの保険商品もありますので、気になる方は一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
所有している不動産が事故物件になってしまう可能性は決してゼロではありません。また、もしそのような状況になってしまった場合は動揺して考えが回らないものです。事故物件となってしまった際に対応すべき流れを事前に掴んでおき、いざというときにスムーズに対応できるよう少しずつ準備を進めていきましょう。