【資産継承・相続対策をしたい方向け】「不動産小口化商品」のメリットを解説
物価高が続く昨今、タンス貯金や銀行預金は目減りするばかり。イ […]
「信頼できる人に自身の不動産管理を任せたい」「不動産を孫の代まで継承したい」などといったニーズに応え、相続対策にも活用可能な不動産管理信託。
ここでは、不動産管理信託の基本的な意味や仕組み、メリット・デメリットに加え、不動産管理信託にかかる費用項目と流れについても解説します。不動産管理信託に関心がある方はぜひ参考にしてみてください。
<解説してくれたのは…株式会社エイブル信託 取締役/一般社団法人プライベートコンサルタント協会所属プライベートコンサルタント 豊本裕司さん(https://www.able-trust.co.jp/)>
目次
信託とは、「自分の財産を信頼する第三者に託し、自分や大切な人のために管理・運用してもらう制度」を指します。財産の管理や運用を誰に託すかを自分で決めて、信頼する人に託すことができるのが大きな特徴です。
信託に関わるのは、委託者・受託者・受益者の3人。
委託者 | 財産の管理を預けて管理を依頼する人 |
受託者 | 財産を委託者から預かって管理・運用を行う人 |
受益者 | 財産の管理によって生じた利益を受ける人 |
受益者は、委託者が指定することで決定します。例えば、オーナー様が委託者としてご自身の不動産経営を信託会社等(受託者)に依頼し、ご自身やご家族を受益者とすることも可能です。
不動産管理信託とは、信頼できる人に不動産の管理・運用を託すことを指します。信託できる不動産は、アパート、駐車場等の収益不動産が対象になります。自宅や空き地など収益を生まない不動産は、後述の家族信託を利用することになりますが、農地等そもそも信託することのできない不動産もあります。
不動産の管理・運用を信託会社等(信託銀行を含む)に委託するので、煩わしく面倒な不動産管理・運用・売却までワンストップでその道のプロに任せることができ、不動産収益の最大化を目指すことができます。また、信託会社等によっては、現物不動産や不動産信託受益権の売買仲介まで行っているところもあります。
不動産管理信託は信託されたときから30年先の世代まで受益者を指定できるため、親(委託者)が亡くなった後、受益者をお子さんに、お子さんが亡くなった後に受益者をお孫さんに予め設定するケースもあります。
不動産管理信託のメリットは、大きく3つあります。
①透明性
②税制面のメリット
③資産承継
不動産管理信託の特徴のひとつが、一般的な不動産管理サービスやサブリースなどと比較した場合の透明性の高さです。
信託会社等は、金融庁管轄の信託業法に基づいて、オーナー様の利益を最優先とすることが義務づけられています。賃貸募集の際は、複数の不動産会社に依頼し、相場以上の賃料収入を安定的に得ることに努め、修繕工事を行う際は、相見積をとり、市場の競争原理や透明性を働かせ、工事のクオリティーを確保した上で工事費用を抑えるように務めなくてはなりません。さらにオーナー様に替わり、長期修繕計画を策定し、修繕計画に基づき、修繕積立金を将来の修繕のために積み立てます。
大切な物件を委託するという意味でも、信頼できる会社を見極めることは重要となりますが、法的な義務付けがなされている点は一定の安心感があるといえるでしょう。
税制面でのメリットも見込めます。まず、不動産管理信託の収益は、配当金として受益者に分配されますが、この権利(不動産信託受益権)は、不動産を保有するのと同等の経済的効果があります。
更に、不動産の売買には不動産取得税、印紙税、登録免許税がかかりますが、不動産信託受益権の売買においては、以下のようなメリットがあります
・不動産取得税がかからない
・不動産の売買に比べて登録免許税のかかる評価額が約5分の1に軽減される
・通常では金額に応じてかかる印紙税が、一律200円になる
例えば、宅地の売買の場合、不動産取得税は固定資産税評価額の2分の1に対して3%課税されます。しかし、不動産信託受益権の売買ならこの税金がかからないことになります。また登録免許税は、固定資産税評価額の土地の場合は1.5%、建物の場合は2%と定められていますが、不動産信託受益権の売買の場合は、土地は0.3%、建物は0.4%です。
このように、収益が上がってからだけではなく、売買の時点でもメリットがあるのが不動産管理信託の特徴です。
不動産管理信託は、オーナー様が生前から亡くなった後も切れ目なく信託契約に基づいて財産管理が可能で、遺族に不動産が信託受益権として承継され、その後の財産管理も受託者である信託会社等に任せることが可能です。
信託契約に予め規定すると、委託者に代わって信託会社等が不動産の売却も可能となります。また信託受益権なので、遺族に法定相続分割合に応じて持分で承継するもとも可能で、遺族は持分に応じた信託配当を受け取ることができるので、不動産の共有トラブル等を防ぐことにつながります。
不動産管理信託にもデメリットはあります。信託を終了し信託受益権を現物に戻すときには、不動産取得税や登録免許税がかかることです。また、信託を設定するときにも登録免許税はかかるため、不動産信託受益権の売買し、短期で信託を終了すると、結果的にみて税金を多く支払わなければならないケースもあるので、注意が必要です。
さらに、信託会社や司法書士など専門家への報酬が発生する点も、後述する家族信託と比較するとデメリットと言えるでしょう。
実際に不動産管理信託を行う場合には、以下のような流れで手続きを行います。
①まずは信託を原因とする所有権移転登記を行います(委託者→受託者への所有権移転の登記)。この変更は不動産登記簿のうち「権利部の甲区」に記載されます。
②所有権移転登記が行われたあとは、信託登記を行います。信託登記を行うと、委託者名、受託者名、受益者名、信託契約概要が記載された信託目録が作成されます。受託者は形式的な所有者で、信託不動産から収益を得る実質的なオーナーは受益者として登記されます。
これらの手続きの際、委託者が用意する書類は、不動産権利書・印鑑証明書・固定資産税評価証明書・実印・身分証明書です。受託者は、住民票・認印・身分証明書を用意します。
不動産管理信託にかかる費用は、大きく以下の3つです。
・登録免許税
・印紙税
・専門家への報酬
登録免許税や印紙税については、前述のとおりです。③の専門家への報酬には、登記の手続きを依頼する際の費用も含まれます。
ご自身で登記全てを行うことは不可能ではありませんが、通常は司法書士に依頼することになるでしょう。
依頼する専門家や賃貸不動産の規模などによって費用は大きく変わります。早めに確認しておきましょう。
不動産管理信託と比較して、信託会社等ではなくご自身の家族に収益不動産に限らず自宅や空き地、金銭、預貯金等の財産の管理・運用を委託することを「家族信託」と言います。この家族信託は、信頼のできる家族を受託者にするので、委託の際に報酬は発生しません。
家族信託は、認知症対策の手段としては有効と考えられている選択肢です。高齢のオーナー様(委託者)が元気なうちからご家族(受託者)に財産を信託すれば、認知症になった後もオーナー様に代わり、ご家族が財産の管理、運用を行い、オーナー様は受益者として財産の運用で得た収益を得ることが可能です。
家族信託のデメリットは、管理を任せられたご家族(受託者)への負担があります。受託者はご自身の財産と信託財産を分別管理する必要があります。
また、信託財産で得た運用収益が発生すれば、年に1回、税務署に信託計算書を提出する必要があることに加え、特に収益不動産の場合は不動産経営にまつわるさまざまな対応が必要となります。いったん委託したご家族(受託者)から「やはり負担が大きい」と言われてしまうことも考えられるでしょう。
また受託者となったご家族が、委託者より先に亡くなった場合に備えて、他のご家族に受託者をお願いすることも想定しておかなければなりません。不動産管理信託は報酬が発生するとはいえ、こういったご家族(受託者)の負担をなくすことができるのがメリットと言えそうです。
ちなみに、オーナー様がご高齢である場合など、認知症対策としてよくあげられる手段として「成年後見制度」があります。この制度は、判断能力が不十分と判断された方が、不利益を被らないよう裁判所によって専任された「後見人」がオーナー様の生活の維持のために財産管理を行うものです。
成年後見制度は、消極的な意味での財産管理しか行うことができず、オーナー様に代わって財産を運用することができません。例えば、オーナー様に代わって不動産の売却ができるのは、オーナー様の生活資金がなくなりそうな時に限られます。
またオーナー様が亡くなった場合、成年後見制度は終了します。遺言書や遺言書がなければ遺産分割協議により、オーナー様の財産が遺族に相続されます。
その点、不動産管理信託や家族信託は本人の生前から亡くなった後も切れ目なく信託契約に基づいて財産の管理が可能で、遺族に財産が信託受益権として承継され、その後の財産管理も受託者である信託会社等やご家族に任せることが可能です。信託契約に予め規定すると、委託者に代わって不動産の売却も可能となります。
前述のとおり、不動産管理信託を利用すれば、お孫さんの代まで受益者を決めることができます。財産の継承者を長期的に指定することで、相続対策になるといえるのです。また、相続税を評価する際、不動産は時価よりも低く評価されることから、現金を相続する場合に比べて相続税の課税対象額「相続税評価額」を圧縮する効果があります。
そのため、現時点で不動産をお持ちでない場合でも、不動産信託受益権を取得して相続対策とすることもおすすめです。
「相続税評価額」とは、土地については路線価、建物については固定資産税評価額、賃貸不動産の場合、貸家評価や貸家建付地評価をもとに設定され、それに応じて相続税の課税額が決定されます。
信託会社等によっては、不動産信託受益権を小口化して1000万円/単位から販売しているところもありますので、現金で小口化された不動産信託受益権を購入することで相続評価額を約70~80%圧縮できるケースもあります。個別の相続税の計算は、専門の税理士に相談しましょう。
不動産管理信託は、所有する不動産管理を信頼できるプロに任せられる制度です。
不動産収益の最大化を目指して対応してもらえることはもちろん、お亡くなりになった後も不動産の管理、運用を継続してもらえます。また、相続対策にも有効活用できるポイントもあるため、制度やデメリット、登記の流れなどを正確に理解した上で、有効に活用するようにしましょう。
エイブル信託では、収益不動産は信託会社、自宅や現預金等その他資産は家族信託と、その資産特性に応じた資産承継対策を提案しています。信託とは、「次世代への贈り物」、大切な資産とともに「家族への想い」を次世代に届けていくことこそが受託者の責務です。ぜひ一度ご相談ください。
この記事に関するお問合せ:エイブル信託(https://www.able-trust.co.jp/)