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賃貸物件の媒介契約(一般・専任・専任+管理)の違いやデメリット、選び方をプロが解説

賃貸経営の基礎
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#空室を早く埋めたい
賃貸物件の媒介契約(一般・専任・専任+管理)の違いやデメリット、選び方をプロが解説

賃貸経営において不動産会社をパートナーとして選ぶ際、入居者募集~仲介を依頼するか、物件の管理まで依頼するかによって、オーナーの業務負担は大きく変わります。実務上は、入居者募集~仲介に関する媒介契約と、入居者対応や家賃回収までを含む「専任媒介契約+管理委託契約」という契約の違いで分けることが一般的です。

不動産の「売買や交換」に関する媒介契約には、宅地建物取引業法に基づいた一般媒介、専任媒介、専属専任媒介という契約があります。しかし、「賃貸」の媒介契約については、宅地建物取引業法の中で契約についてのルールが明記されていません。

ただし、業界の慣習に基づき、実務ベースでは賃貸物件の「一般媒介契約」または「専任媒介契約」を結ぶことがほとんど。また、一般的には仲介会社が管理まで引き受けていることが多いため、この記事では下記の3つの契約形態について解説します。

・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専任媒介契約+管理委託契約

今回は、長年オーナーと向き合い、物件の管理や賃貸経営のサポートに従事してきたエイブルの鈴木担当部長に、それぞれの契約形態の特徴やメリット・デメリット、活用事例を詳しく伺いました。仲介・管理の両方に精通したプロの視点から、ご自身に合った契約を選ぶヒントをお届けします。

鈴木 晋
エイブル 東日本コンサルティング第一事業部 担当部長
仙台を中心とした東北エリアで賃貸経営のサポートや資産活用のコンサルティングに従事。賃貸仲介・管理・土地活用・事業承継など、幅広い相談に対応してきた賃貸経営の専門家。業界歴は25年以上。
資格:宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

賃貸物件の仲介を不動産会社に依頼する、3つの契約

賃貸物件の入居者募集や管理を不動産会社に依頼する場合、オーナーが締結するのは主に「入居者募集のための契約」と「物件や建物の管理を任せるための契約」に分かれます。

入居者募集に関する契約には、複数の不動産会社に並行して仲介を依頼できる「一般媒介契約」と、1社に絞って依頼する「専任媒介契約」の2種類があります。

鈴木担当部長
入居者募集や契約に関する業務に加え、家賃回収・クレーム対応などの管理業務もまとめて任せられるのが「専任媒介契約+管理委託契約」です。

管理委託の内容やメリットについて、詳しく解説した記事はこちら
【関連記事】賃貸管理とは?サービス内容と管理手数料、失敗しない管理会社の選び方をプロが解説

賃貸物件の管理について「管理委託方式」と「サブリース方式」の違いを解説した記事はこちら
【関連記事】サブリースと管理委託の違い!どちらを選ぶべきかも徹底解説

「入居者募集だけでなく、管理まで一括で任せたいか」「オーナーがどれだけ管理業務に関わることができるか」といった観点から、一般媒介・専任媒介・専任媒介+管理委託という3つの契約形態を比較・検討するケースが一般的です。ここでは、それぞれの特徴や違いを詳しく解説していきます。

1.一般媒介とは

一般媒介(一般媒介契約)は、複数の不動産会社に同時に募集依頼ができる契約形態です。

一般媒介のメリット

一般媒介契約の最大のメリットは、複数の不動産会社に並行して仲介を依頼できることです。その分、物件の情報が広く紹介され、より多くの入居希望者の目に触れるチャンスが生まれる可能性があります。

一般媒介のデメリット

物件によっては紹介する優先度が下がりやすく、入居者がなかなか決まらないケースもあります。その場合、オーナー自ら原因を探り、募集条件を調整していく必要があります。

また、複数の不動産会社が対応することから、下記のようなデメリットが存在します。

・契約書の形式が会社ごとに異なる(※1)
※1:契約書の書式をオーナーが選ぶこともできるが、実務上は不動産会社が用意した書式に従うケースが多い

・それぞれの会社が物件の情報を別々に入力し掲載するため、結果的に不動産のポータルサイトや広告ごとに違う情報(礼金などの条件や特約事項など)が出回ってしまうことがある

・複数の不動産会社からバラバラ連絡が来るため、対応が煩雑になる

鈴木担当部長
不動産会社には、毎日膨大な数の物件情報が届きます。広く入居者募集できる一方で、一般媒介の物件は「埋もれやすい」という側面があります。
募集戦略もオーナー様次第になるため、賃貸経営の経験や判断力が求められます。また、条件の調整や問い合わせの対応も各社とやりとりする必要があり、煩雑になりやすいです。

2.専任媒介とは

専任媒介(専任媒介契約)とは、ひとつの不動産会社に入居者募集を一任する契約です。ただし、専任媒介契約を交わした不動産会社が、他の不動産会社にも募集を依頼することがあります。

専任媒介のメリット

専任媒介最大のメリットは、1社に任せることで、その不動産会社が責任を持って募集活動を行うということです。

また、募集条件を相談したり、不動産会社から空室を埋める戦略の提案を受けたりすることも可能です。やり取りも1社だけで済むので、複数社との対応が煩雑に感じる方には、負担軽減にもなります。

専任媒介のデメリット

契約を結んだ不動産会社の仲介力や対応力に影響されるため、会社選びを誤ると「なかなか決まらない」という事態に陥ることもあります。契約期間中は他社への切替ができないため、事前に仲介力や実績をしっかり確認することが重要です。

鈴木担当部長
オーナー様が不動産会社とコミュニケーションを取ることで、条件調整や戦略的な相談がしやすく、成約に向けた一環的な対応が取れる契約です。ただし、管理業務はオーナー様が行うため、家賃滞納や退去、設備故障やクレームなどが発生した場合には対応が必要です。

3.専任媒介+管理委託とは

専任媒介(専任媒介契約)+管理委託(管理委託契約)とは、1社が責任を持って入居者を集める「専任媒介」に加え、同社に管理業務を任せる契約形態です。管理委託の内容には、オーナーが対応できない部分(委託したい部分)を任せる「一部委託」と入居後の家賃の管理やトラブル対応なども一括で任せられる「全部委託」があります。

また、所有する賃貸物件を不動産管理会社などの事業者に一括借り上げしてもらう「サブリース契約」を結んだ場合も、すべての管理業務を委託できます。

管理委託とサブリースを比較した記事はこちら
【関連記事】サブリースと管理委託の違い!どちらを選ぶべきかも徹底解説

専任媒介+管理委託のメリット

専任媒介+管理委託の魅力は、仲介と管理をまとめて1社に任せられるということです。不動産会社とのやり取りも1本化できます。

また、全部委託であれば、賃貸経営に関わる幅広い業務をまとめてプロに任せられます。
入居者募集、契約、家賃回収、トラブル対応、退去時の精算、修繕や更新の手続きまで、オーナーに代わって不動産会社が一括で対応するため、時間や労力、精神的な負担を大きく軽減できます。

専門家が対応することでトラブル発生時のスムーズな処理や、法的なリスクの回避にもつながり、結果として経営の安定化が図れる点もメリットと言えます。

専任媒介+管理委託のデメリット

管理業務の対価として管理手数料がかかることです。また、契約を結んだ不動産会社の仲介力や対応力が問われるため、選定を誤ると「空室が続く」「トラブル発生時の入居者対応が遅い・不十分」といった事態に陥ることもあります。契約期間中は他社への切替ができないため、事前に仲介力や実績をしっかり確認することが重要です。

鈴木担当部長
専任媒介+管理委託の中でも、全部委託なら「安心して任せられる体制」を整えることができます。年々複雑化するトラブル対応や退去時の精算なども、専門家に任せることでオーナー様の負担を大きく軽減できます。ただし、管理体制が整っているだけでは十分とはいえません。「管理+仲介」両方に強みを持つ会社を選ぶことが、賃貸経営を成功に導くカギとなります。

仲介力が高い不動産会社を見分けるポイント

賃貸仲介は売買仲介に比べ手数料が安価なため、売買に関する業務を優先する不動産会社もあります。そのため、賃貸専業で仲介業務を行っている不動産会社を選ぶことをおすすめします。

また、店舗数が多くてもフランチャイズ店の場合、情報の連携が取れていないケースもあります。直営店なら情報の連携が店舗間でスムーズに取れるため、早期の成約につながる可能性があります。

鈴木担当部長
専任媒介や専任媒介+管理委託でも、オーナー様が不動産会社とコミュニケーションを取ることが重要です。遠方にお住まいの方でも電話などで密に連絡を取り、募集条件や戦略を相談しやすい関係性が築けると、成約につながりやすくなります。

契約の違いによって「仲介手数料」に差があるのか?

結論からいえば、契約の種類によって仲介手数料に差が出ることはありません。
賃貸仲介における仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限が明確に定められています。不動産会社は原則として、下記の範囲でしか受け取ることができません。

(報酬)
第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
3 国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。
4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。
出典:宅地建物取引業法|e-GOV 法令検索

国土交通省が定める、貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は下記のように設定されています。

<賃貸借取引の仲介手数料の上限額>
【原則】
○ 不動産業者が、依頼者の双方(貸主及び借主)から受領できる仲介手数料の合計額(税込)は、「1ヶ月分の賃料×1.1倍の金額」以内
○ 居住用建物の仲介の場合:上記に加え、依頼者の一方(貸主もしくは借主)から受領できる仲介手数料(税込)は、「1ヶ月分の賃料×0.55倍の金額」以内(仲介の依頼を受けるに当たって、当該依頼者の一方より承諾を得ている場合を除く)
○ 貸主になる方向け:なお、一定の戸建の空き家や分譲マンションの空き室の賃貸借の場合は【特例】(コチラをクリック)の対象となる場合がございます。ご確認ください。
出典:建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ – 国土交通省

そのため、「専任媒介や専任媒介+管理委託だから高い」「一般媒介だから安い」といったことはなく、契約形態によって手数料が変動することは基本的にありません。

「どの契約が合う?」オーナーの目的・経験に応じた選び方

オーナーの賃貸経営の経験値、物件の状況や規模、経営スタイルなどによって、最適な契約形態は異なります。

ここからは、オーナーの目的や状況に応じて、一般媒介・専任媒介・専任媒介+管理委託がそれぞれどんな方にフィットするのかを具体的にご紹介します。

一般媒介が向いているオーナー

・不動産賃貸業を専業で営める方
・自身で審査や契約内容をチェックできる方
・賃貸経営に時間や手間をかけられる方

また、複数の不動産会社からの問い合わせに即対応できる体制があることも重要です。不動産会社にとっては「すぐ対応してくれるオーナー」が優先されることもあり、オーナーのレスポンスの早さが成約スピードに直結する可能性もあります。

鈴木担当部長
一般媒介は、不動産賃貸業を「専業で、または本業のように取り組める方」に向いていると思います。賃貸経営の経験が豊富で、不動産会社の言うことを見極めながら対応できる方であれば、複数社と戦略的に連携することも可能です。ただし、知識や経験、業務に割ける時間や判断力がないと、負荷が多いというリスクはあるかもしれません。

専任媒介が向いているオーナー

・管理業務については自分で対応できる方
・自主管理で賃貸経営の経験を積みたいと考えている方
・賃貸経営の規模が小さく、管理については自身で対応できる方
・近くに住んでいて、入居者対応もすぐにできる方

専任媒介では、1社が窓口となって他の不動産会社にも広く情報を出してくれるケースもあります。活動報告も定期的に受けられるため、状況を把握しやすい点も魅力です。

鈴木担当部長
専任媒介は「物件は自主管理したいけど、募集はプロに任せたい」という方におすすめです。

専任媒介+管理委託が向いているのはこんなオーナー

・今まで自主管理をしていて、対応に負担を感じている方
・専任媒介契約を結んでいるものの、空室が多くなかなか成約しない方
・物件の遠方にお住まいの方
・仕事や家庭の事情などで、賃貸業務に関わる時間が取れない方
・事業承継で賃貸経営を引き継いだ2代目オーナー

専任媒介+管理委託の場合、一部委託ならオーナーが対応できない(委託したい)部分の管理業務を任せることができます。また、全部委託なら募集から契約、入居後対応、退去処理まで一手に任せられるため、最もオーナーの物理的な負担が少ない契約形態です。特に、退去時の対応やクレーム対応といった専門的な知識やノウハウが求められる場面では、管理会社の力が大きく発揮されます。

鈴木担当部長
全部委託の管理委託であれば、契約を結んだ不動産会社が仲介と管理の窓口となって対応してくれます。入居者募集だけでなく家賃滞納や退去時の精算など、負担の多い管理業務もプロに任せることができます。

契約形態を切り替えながら、賃貸経営を拡大させていった2代目オーナーの実例


東北地方のある物件は、1棟8室のうち半数の空室が続いている状況でした。

空室が気になった鈴木担当部長が、度々先代オーナーを訪問しても「地元の不動産会社に任せているから……」と門前払いが続いていましたが、ある日ご子息から「父が亡くなった」との連絡が入りました。残されていた名刺を見て、エイブルに連絡をくださったのです。

2代目オーナーとなったご子息の相談を受け、まずは一般媒介契約を結んで入居者募集に注力したところ、2ヶ月で満室化に成功。その後「5年分の家賃を滞納していた入居者の対応を任せたい」と、専任媒介+管理委託(全部管理)契約(※2)を締結。分割返済プランを提案し、10年をかけて滞納を解消することができました。家賃を滞納していた方は今でも入居を継続しています。
※2:エイブルの場合、全部委託の管理契約を「一括管理契約」と呼んでいます

オーナーと密にコミュニケーションを取り、仲介や管理業務を通じて信頼関係を深めていった結果、長期的なプランニングを含めてご相談いただけるようになり、その後も3年で6棟を新築、7棟40室以上の運営にスケールアップされました。

鈴木担当部長
最初は「賃貸物件は自分にとって重荷のように感じる」と話していた2代目のオーナー様でしたが、満室になり収益が安定すると、賃貸経営への熱意が生まれ、さまざまな相談をしてくださるようになりました。賃貸経営に伴走し、しっかり成果につなげられたことは、私たちにとっても誇らしい経験です。

入居者募集のための契約選びは「どこまでプロに任せたいか」で決まる

この記事で紹介してきたように、賃貸経営における不動産会社との契約は、主に以下のように分類されます。

・複数社に並行して入居者募集を依頼する「一般媒介契約」
・入居者募集を1社に任せる「専任媒介契約」
・入居者募集と管理業務を1社に任せる「専任媒介契約+管理委託契約」

物件の状況やオーナーが「何を、どこまでプロに任せたいか」によって、最適な契約形態は異なります。

まずは、自分がどこまで対応できるかを整理したうえで、信頼できるパートナーを探すことが、スムーズな成約や安定した賃貸経営につながります。

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