【2020民法改正】賃貸経営への影響・大家さんが気をつけるべきポイントをまるっとおさらい!
2020年4月に120年ぶりの民法改正があり、今までの賃貸借 […]
2020年4月の民法改正で、「設備の一部減失による賃料減額」のルールが変更になりました。設備は大家さんの所有物であり、故障したら修理するという実務的な流れに変わりはありませんが、民法改正により賃料の減額に関するさまざまな義務が発生します。
この改正により大家さんが気をつけるべきことを弁護士が解説していきます。入居者とのトラブルを避けるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
※記事の内容は、2024年7月時点の法令・情報に基づいています
監修=芝大門法律事務所 高橋 真司弁護士
慶応義塾大学卒業後、99年に弁護士登録・芝大門法律事務所へ入所。不動産紛争、近隣問題、債権回収、相続など多くの大家さんが悩むテーマを中心に取り扱う「不動産問題のプロ」。著書に「賃貸住宅の法律Q&A」(大成出版社・共著)ほか。 |
目次
2020年4月の民法改正で「設備の一部減失により賃料減額」について、改正前は「賃料の減額が請求できる」としていましたが、改正後は「当然に賃料は減額される」となり、より明確になりました。
入居者がわざと(故意に)またはうっかり(過失で)不具合を起こしたり、壊してしまったりした場合を除き、トイレやエアコンなどの一般的な設備故障は、大家さんが修理する義務があります。対応が遅れると入居者が不便を強いられることも考えられます。その場合、改正前では入居者からの請求があった場合にのみ対応していたものが、当然に減額されることになりました。
入居者から設備の故障などの通知があったにもかかわらず、対応が遅くなり入居者が修理した場合には、入居者から修理代も請求されることになります。そのため、大家さんは入居者から設備故障の通知があった場合、すみやかに対応しなければなりません。
設備故障に関して、代表的なものは以下です。
・エアコンの故障 ・水回りの故障(トイレ、浴室、キッチン、洗面台など) ・給湯器の故障 ・ビルトインコンロの故障 ・ビルトイン食洗機の故障 ・Wi-Fi付き物件の通信不良 |
電球などの消耗品は基本的には入居者負担、排水溝などのつまりは原因によりケースバイケースとなります。
排水溝のつまりの場合 入居者負担となるケース:掃除不足や異物を落とすなどでつまった場合 大家さんの負担になるケース:掃除できない範囲による、排水管のつまりや老朽化 |
賃料減額に関してのトラブルを防ぐためには、賃貸借契約書に明記することが大事です。
賃貸借契約書に、「どの設備が対象なのか」、そして「減額の割合」ついても明確に記載することで、トラブルを防ぐことができます。また、多額の請求を避けるためには、通知に関して「乙は故障などにより設備が使用できなくなってから○日以内に甲に申し出る」などの特約を記載することも重要です。賃料減額の割合は入居者との合意の上決定しましょう。
また、管理業務を委託している大家さんは、設備故障が起きた際の対応について管理会社とルールを決めておくとよいでしょう。
減額の基準の一例として、公益財団法人日本賃貸管理協会の「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」に具体的な数字が書かれた資料があります。
こちらは、一般的な賃貸借契約の家賃減額の目安となります。減額の基準を契約書の「特約」に記載することで、トラブルを回避しましょう。
状況 | 賃料減額割合(月額) | 免責日数 |
電機が使えない | 40% | 2日 |
ガスが使えない | 10% | 3日 |
水が使えない | 30% | 2日 |
トイレが使えない | 20% | 1日 |
風呂が使えない | 10% | 3日 |
エアコンが作動しない | 5,000円(1か月あたり) | 3日 |
テレビ等通信設備が使えない | 10% | 3日 |
雨漏りによる利用制限 | 5~50% | 7日 |
※免責日数とは:物理的に代替物の準備や業務の準備にかかる時間を一般的に算出し、賃料減額割合の計算日数に含まない日数
【出典】(公財)日本賃貸住宅協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」令和2年3月19日
たとえば、家賃が6万円の物件でトイレが3日使用できなかった場合、以下のように計算します(1か月が30日間であった場合)。
6万円(月額家賃)× 30%(減額割合)÷ 30日 = 日額600円 |
3日分で1,800円となりますが、免責日数を引き、実際には2日分の1,200円が減額となる可能性があります。
入居者が退去したら古い設備を新しいものに変えることで、早期の故障や設備不良を防げます。また、退去時の原状回復リフォームと同時に、エアコンや排水管のクリーニングなど、メンテナンスを実施することもおすすめです。
それでは実際に、入居者から故障の連絡が入った際の流れを解説していきましょう。
1. 入居者から故障の連絡
2. 状況を確認
3. すみやかに設備会社に連絡
4. 入居者に修理期間を連絡
5. 修理
6. 契約書を確認して、通知から修理までの日数を減額
上記のような流れになります。入居者の故意や過失による故障の場合は、大家さんの負担ではなく入居者の負担になりますので、状況を確認することは重要です。設備に関して詳しくない大家さんは、設備会社に任せて判断してもらうとよいでしょう。
今回は、2020年4月の民法改正で変更になった、「設備の一部減失による賃料減額」のルールについて、大家さんが気をつけるべきことを解説しました。安心で快適な住居を提供するのは大家さんの役目です。しかし、いつでも早急な対応ができるとは限りません。
エイブルでは「エイブル設備サポートプラス」を提供しています。
コールセンターが24時間対応していますので、入居者を待たせることがありません。修理手配も引き受けていますので、大家さんの手間が削減され、ストレス軽減にもつながります。
対応の遅れは入居者の不満や退去につながります。保証サービス等を活用して、安定した賃貸経営を目指しましょう。