エイブル

家主様・オーナー様向けサイト
  1. HOME
  2. お役立ち記事

【弁護士監修】所有地に無断駐車された場合の対応は?予防策も解説

賃貸管理
公開日:
更新日:
#トラブルを解決したい
【弁護士監修】所有地に無断駐車された場合の対応は?予防策も解説

何の乗り物かで変わる?私有地への無断駐車の対応

「所有するアパートの駐車場や敷地内に、バイクなどを無断で駐車されて困っている」という大家さんも多いのではないでしょうか。自動車(普通乗用自動車、軽自動車)、バイク(大型・普通二輪)、原動機付自転車(以下、原付)、自転車などの無断駐車・無断駐輪(以下、無断駐車)によって不便を強いられる入居者・利用者のためにも、速やかに解決したいものです。

そこで今回は、所有する私有地に無断駐車をされた場合の対処法について詳しく紹介します。また、無断駐車を未然に防ぐための対策方法をお伝えします。

監修=芝大門法律事務所 高橋 真司弁護士

慶応義塾大学卒業後、99年に弁護士登録・芝大門法律事務所へ入所。不動産紛争、近隣問題、債権回収、相続など多くの大家さんが悩むテーマを中心に取り扱う「不動産問題のプロ」。著書に「賃貸住宅の法律Q&A」(大成出版社・共著)ほか。

URL:https://www.shibadaimon-law.com/staff/takahasi

高橋先生:「民事のトラブルについては、状況の理解を深め、対応の方針を早く定めることが大切です。顧問弁護士などなじみの専門家への相談はもちろん、弁護士会の相談窓口や行政の相談会を活用して、早期の相談をおすすめします」

私有地への無断駐車は解決しにくい?その理由とは

所有する賃貸物件の敷地内や駐車場など、私有地への無断駐車の対応は難しい問題です。その理由を3つお伝えします。

  1. 私有地への無断駐車車両について、移動を命じる根拠法令がない
  2. 警察が介入しにくい
  3. 「自力救済」禁止の原則

ひとつずつ見ていきましょう。

理由1:私有地への無断駐車を警察が取り締まるのは難しい

公道への無断駐車や無断駐輪(放置自転車など)に対しては、道路交通法が適用され、警察が移動を命じることができ、これに従わない場合は刑事罰の対象となります(道交法51条1項・119条1項7号)。しかし、無断駐車されている場所がアパートの敷地や駐車場などの私有地の場合は、道路交通法が適用されないため、警察が移動を命じることができません。そのため、警察によって取り締まる(移動を命じる)ことが難しいのです。

ただし、駐車・駐輪されているものが盗品である可能性もあります。状況によっては不法侵入罪や威力業務妨害罪など、別の罪が適用される可能性があることから「警察に相談しても無駄」とまで考える必要はありません。

また、私有地への無断駐車は、民法上の「不法行為」として扱われます。仮に刑事罰の対象とならない場合でも、民事裁判等で損害賠償等を求める権利はあります。

理由2:民法上の不法行為は警察が介入しにくい

前述のように刑事罰の対象とならない場合、私有地への無断駐車は、原則として「当事者どうしで解決する」必要があります。

警察には「民事不介入」という原則があります。簡単に言えば、個人間の権利や財産をめぐる争いごとは、裁判などで司法が解決するべきものとされており、警察は介入することができない場合が多いのです。

とはいえ、このあと説明する【対応のステップ】のように、適宜警察に相談ができるポイントもあります。当事者同士だけでやりとりすることはトラブルにつながる場合もありますので、早い段階で(弁護士など)専門家への相談をすると、具体的な状況に応じた対応方針を明確にでき、早期解決につながる可能性が高まります。

理由3:一方的な対応は「自力救済」禁止の原則に反する可能性がある

私有地に無断駐車されているからといって、勝手にレッカー移動をしたり、逆に移動できないように出口をふさいだり、タイヤをロックしたり、撤去・廃棄したりすることは原則としてできません。

これは、日本では「自力救済」が禁止されているからです。「自力救済」とは、司法手続きによらず、自らの力によって自己の権利を確保することをいいます。自力救済は原則違法です。自力で解決しようとするあまり、車両を傷つけるなど乱暴な対応をしてしまうと、ご自身が刑事罰に問われてしまったり、損害賠償を求められてしまったりする可能性もあるため、注意しましょう。

私有地に無断駐車された際の対応

前述のとおり、私有地での無断駐車は原則、当事者同士で解決をしなければなりません。ただし、無断で停められている自動車・バイク・原付・自転車などの所有者が誰なのか、すぐに判断できない場合が大半でしょう。

そこで、対応方法についてステップを分けて解説していきます。

  • ステップ1. 警察に通報
  • ステップ2. 車両・ナンバー・登録番号などを撮影し、警告文の貼り付け
  • ステップ3.(可能なものは)所有者を特定し、直接注意喚起
  • ステップ4.最終手段は弁護士を通じて訴訟

ひとつずつ説明していきます。

ステップ1:いったんは警察に通報

警察に相談することで、盗品でないかの確認ができますし、盗難車両でない場合でも所有者を照会し、警察から本人に対応を促してもらえる可能性があります。

ただ、前述の通り、刑事罰にあたらない事案の場合、警察は「民事不介入」の原則により、個人間のトラブルの解決はしてくれません。

全てのケースにおいて警察が動いてくれるわけではありませんが、状況によっては警察が所有者を照会・連絡をしてくれることもあります。

ステップ3でも説明しますが、例えば、原付のように市区町村への登録が必要なものや、自転車など警察への防犯登録の対象となっているものの場合は、個人はもちろん弁護士経由であっても個人情報を開示してもらえないことが実務上は多いので所有者が判明しない場合もあります。

ただ、警察から所有者に連絡がついた場合は、取りに来て、無断駐車を止める方もいるでしょうし、連絡がついたのに駐車したまま放置された場合は、所有権放棄の意思を推認する材料になったりもするので、有益です。

ステップ2:車両やナンバー、登録番号などを撮影し、警告文の貼り付け

盗難車ではない無断駐車に対しては、車両やナンバー、登録番号を撮影し証拠を確保しておきます。そして「無断駐車禁止」の旨を張り紙して警告しましょう。

なお、張り紙を車両や窓ガラスに直接テープで貼り付けてしまうと、車両の一部が傷ついたりした場合に器物損壊罪にあたる可能性がありますし、損害賠償責任を負担する可能性があります。張り紙はワイパーに挟んで掲示するなど、車体を傷つけない方法で行ってください。

ステップ3:可能なものは所有者を特定し、直接注意喚起

警告を無視して何度も無断駐車が繰り返される場合や無断駐車のまま放置されている場合は、所有者を特定して直接注意喚起をする方法が効果的です。

普通乗用自動車の場合は、管轄の運輸支局にて所有者情報の開示請求手続きを行うことで所有者を特定できます。軽自動車についても軽自動車検査協会に状況を説明して、必要書類を提出すると所有者情報を開示してもらえる運用がされているようです。

バイクについては、開示請求制度がないので、弁護士に対応を依頼する前提で依頼し、弁護士法23条に基づく照会制度を利用すると所有者情報の開示がされます。原付についての弁護士法23条照会に対して所有者情報を開示するかの対応は市区町村で異なるようですし、自転車については現状では所有者情報の開示を受けることが困難な状況です。

所有者が特定できたら内容証明を送り、直接、撤去や無断駐車の禁止を請求できます。ここで注意したいのは、開示された個人情報の取扱いです。あくまでも法的な手続きを進めるための情報として使用するに留め、直接訪問するなど新たなトラブルに発展するような対応は慎重にすべきです。

開示請求手続きについては、弁護士など専門家に代行してもらうことも可能です。

ステップ4:最終手段は弁護士を通じて訴訟

悪質な無断駐車に対して、大家さんの法的責任が生じない最終手段としては「訴訟を起こす」となります。つまり、民事訴訟による損害賠償請求や車両撤去土地明渡請求などの手続きを行います。訴訟手続は、本人が行うことも可能ですが、専門的な手続きなので、弁護士を代理人として依頼すべきでしょう。

2018年には、店舗の駐車場に1年半にわたって無断駐車をしていた所有者に対し、約900万円の支払いを命じた判例もあります。

ただし、すべてのケースで高額な損害賠償が認められるわけではありません。さらに、裁判費用はもちろん手間や時間がかかるため、訴訟を起こすべきかどうか、費用や手間、心理的な負担なども含めて検討しましょう。

「相手」がいなければ「訴訟」という手段はとれないが……

ここまで、無断駐車の発生から実際の対応について紹介してきましたが、ここで注意したいのは「所有者が判明していない場合には、訴訟を起こすことすらできない」という点です。前述の通り、所有者情報の開示を受けることが難しい「原付」や「自転車」の場合や、ナンバープレートなどが外された車両の場合には、相手がわからないために訴訟を行うことができません。

これらの場合には「遺失物」としての対応をとることが考えられます。

遺失物として警察に届け、それが受理されると警察が3か月間「遺失物」として公告を行い、その後持ち主が届け出なければ、拾得者としてその自転車や原付の所有権を取得することができます。そうすると、所有者として廃棄等の処分ができます。

ただし、警察も廃棄車両や取りに来るつもりで置いている可能性がある車両は遺失物とはいえないとして受理しない対応も考えられます。

無断駐車の理由は何か、可能性をつぶして解決へつなげる

そもそも車両が利用権限無しに駐車されている理由としては、①盗難、②廃棄、③一時的な無断駐車(後でまた利用する意思がある場合)が考えられます。警察への相談で盗難車両ではないことが確認できていれば、②か③ということになります。このうち、②の廃棄の意思で車両が駐車されていたのであれば、法律上は、その後最初に占有した者が所有権を取得します。

ですので、車両の状態、駐車期間などから廃棄車両と考えられる場合は、撤去・処分するということも考えられます。

ただ、この場合、万一車両所有者がその所有権を放棄していないという場合には、損害賠償責任を負担するリスクがありますので、廃棄車両と考えられるかについては慎重に判断すべきでしょう。

私有地への無断駐車を防ぐための対策とは

違法駐車2

ここまで説明したように、無断駐車が起きてしまうと、解決には相当な時間と労力、心理的な負担を要します。そもそも無断駐車をされないよう、予防策を講じておくことが重要です。私有地に無断駐車をさせないようにするためには、以下の3つの対策を取りましょう。

  1. 看板の設置
  2. カラーコーンやチェーンの設置
  3. 防犯カメラの設置

それぞれ見ていきましょう。

無断駐車への対策1:看板の設置

目のつきやすい場所に「無断駐車禁止」の看板を設置する方法です。契約者以外は駐車できないことが分かれば、私有地とは知らずに駐車していたというケースが減る可能性があります。

ちなみに、看板に「罰金◯万円」と書いている場合がありますが、これには法的な強制力はありません。土地所有者が一方的に決めた金額を請求しても、無断駐車した側には支払う義務がないのです。実際に、無断駐車・無断駐輪の相手に法外な金額を請求した場合は、逆に恐喝被害などで訴えられる可能性もあります。

無断駐車への対策2:カラーコーンやチェーンの設置

物理的な予防策として有効なのが、カラーコーンやチェーンの設置です。

駐車・駐輪をするためには一度降りてカラーコーンやチェーンを外す必要があるため、手間がかかり、諦める可能性が高くなります。
ただし、この方法は「空きスペース」に無断駐車・駐輪をさせない予防策です。前述のとおり、すでに無断駐車をしている車両に対し、カラーコーンやチェーンで車両を塞ぐなどの制裁は、自力救済にあたり禁止されていますので注意してください。

無断駐車への対策3:防犯カメラの設置

防犯カメラを設置することは、監視の目があるため無断駐車の抑止効果につながります。また、実際に無断駐車があった場合にも、証拠として映像を残すことができます。多少費用はかかりますが、予防策として効果的な方法です。

まとめ

私有地への無断駐車は警察が介入しにくく、乱暴な解決方法ではかえって罪に問われる危険性もあるため、大家さんにとっては頭の痛い問題です。

冒頭の高橋先生のコメントのように、所有する土地で無断駐車が行われた場合には、早めに専門家に相談しましょう。

また、まだ無断駐車の被害に遭っていない場合には、これ以上の被害が起こらないように対策を講じておくことがおすすめです。無断駐車されやすいのは、管理がされていない場所ともいえます。無断駐車を防ぐためにも、所有物件にはこまめに足を運び、目配りをしておかなければなりません。兼業大家さんや所有地から遠方にお住まいの場合など、自主管理が難しいと感じる場合には、ぜひ管理会社への委託も検討しましょう。

<監修=芝大門法律事務所 高橋 真司弁護士>

フリーワード検索