争続(あらそうぞく)を回避する!専門家と信託会社の活用法とは
賃貸物件から賃料等の収益は受け取りつつも、不動産の管理・運用 […]
物価高が続く昨今、タンス貯金や銀行預金は目減りするばかり。インフレ対策として不動産投資に興味はあっても、人気の都心立地は高額ですし、購入手続きや管理の面倒さから二の足を踏む人も少なくありません。
2001年に不動産を証券化した「REIT(不動産投資信託)」が、2017年に「不動産クラウドファンディング」が登場。少額から不動産に投資できることから高所得者だけでなく、中間層を取り込み、徐々に利用者が増えています。
一方、こうした不動産証券化商品は、投資商品としての色が強く、不動産投資の税評価額(相続税、贈与税、所得税)の軽減効果は、ほとんど期待できません。
インフレ対策として資産を守りつつ相続対策もしたい――。そんな方にお勧めしたいのが税(相続税、贈与税、所得税)の軽減効果のある「不動産小口化商品」です。本記事では、「不動産証券化商品」の各商品の特徴、相続面で様々なメリットを持つ「不動産小口化商品」の特徴をご紹介します。
<解説してくれたのは…株式会社エイブル信託 取締役/一般社団法人プライベートコンサルタント協会所属プライベートコンサルタント 豊本裕司さん(https://www.able-trust.co.jp/)>
目次
不動産は、一般的な株式や債券と比べると、価格変動が少なく、安定した収益が見込みやすい投資商品と言われています。一方で、値上がりが期待できる都心立地は高額なことも多く、投資を断念する人も少なくありません。
気軽に少額からの不動産投資を実現したのが、「REIT」「不動産デジタル証券(セキュリティ・トークン)」「不動産クラウドファンディング」などの不動産証券化商品。これらの商品は、適用される法律(金融商品取引法、不動産特定共同事業法、投信法等)によって、販売者の事業体(合同会社、株式会社、不動産投資法人)や商品形態などが細かく異なりますが、「不動産を証券として細分化することで、投資家から出資を募り収益を分配する」という基本スキームは共通です。
不動産証券化商品として、最も良く知られているスキームが「REIT」です。投資家から集めた資金で不動産投資を行い、賃貸料収入や不動産売買益を原資として投資家に配当するもので、一般的に「不動産投資信託」と呼ばれます。REITは米国で1960年代に生まれた商品で、日本でも2001年9月に運用が開始され、2023年12月末現在約58の銘柄が上場しています。「REIT」は、証券取引所を通じて1口数万円から投資できます。また、配当利回りも3~5%と比較的高く、中途換金可能な点も評価されています。
不動産デジタル証券(セキュリティ・トークン)とは、仮想通貨などにも使われるブロックチェーンを用いて、電子的に発行、管理された不動産証券化商品を指します。REITと同様、少額投資が可能であり、ブロックチェーンを利用しているためデータ改ざんのリスクが低く、取引の安全性が高いと言われています。REITが多数の物件をまとめて運用するのに対し、一物件ごとに不動産に投資でき、またREITとは異なり非上場商品であるため、不動産鑑定評価額で評価され価格変動が少ない点もメリットになっています。
不動産クラウドファンディングとは、不動産購入の資金調達を目的としたクラウドファンディングであり、少額から投資可能かつ3~10%と高い利回りが期待できる一方で、REITや不動産デジタル証券(セキュリティ・トークン)に比べると換金性と流動性が低く、決められた運用期間内での解約ができないケースも多いとされています。
不動産証券化商品は、現物不動産への投資と比べ、手軽に投資できることから着々と市場規模が拡大しています。一方で、「REIT」「不動産デジタル証券(セキュリティ・トークン)」「不動産クラウドファンディング」は、投資商品としての色合いが強く、相続税や贈与税、所得税などの軽減効果はほとんどありません。
また、当然ながら不動産そのもののリスクに加え、金融商品としての分配金の減額や元本割れなどのリスクがあります。特に「REIT」は、経済情勢や株式市場動向などの影響を受けやすく、価格変動も激しいと言われており、取引のタイミングによって損失が生じる可能性があります。不動産クラウドファンディングは、事業会社自らが匿名組合(後述)を組成して運営、販売するので、事業会社が倒産するリスクを考慮して投資していく必要があるでしょう。
「不動産小口化商品」とは、「不動産証券化商品」の1つであり、不動産を小口化して複数の投資家で収益をシェアする商品。収益をシェアするだけでなく、不動産の所有権や持分権もシェアする商品です。投資金額は、他の不動産証券化商品と比べるとやや大きくなるものもありますが、現物不動産への投資に比べると投資金額のハードルは低いです。
不動産小口化商品は、「匿名組合型」「任意組合型」「信託受益権型」の3種類があります。いずれも、資産運用のプロが選んだ優良不動産を小口で購入することができ、管理にも手間がかからないという点は共通です。次項では、それぞれの特徴をご紹介します。
匿名組合型は、不動産小口化商品として最も数が多い商品です。短期運用型の商品が多く、「任意組合型」「信託受益権型」と比べると、少額から投資できます。投資家は、事業者との匿名組合契約に基づき出資し、不動産の所有権を持つのは事業者となります。配当金は原則、雑所得となり、相続対策のメリットは期待できません。また、「不動産クラウドファンディング」もこの匿名組合型に分類されます。
任意組合型は、不動産小口化商品を購入した複数の投資家が組合を作り、収益と損益をシェアする形態。不動産の所有権は組合財産として共有されます。
登記の方法としては、登記簿に投資家全員の名前が記載されるやり方と、事業者が組合員(投資家)を代表して登記するやり方とがあります。登記費用を抑えるために、事業者が代表して登記しているケースが多いです。
税務上、相続時や贈与時における評価額は、路線価や固定資産税評価額をもとに算出され、現物不動産への投資同様に(現金などと比べて)税の圧縮効果が期待できます。なお、事業者が倒産した場合、事業者名義で登記している場合は、差し押さえなどの倒産手続きを取られるリスクがあるので注意しましょう。
信託受益権型では、不動産信託を利用して、投資家が「信託受益権」を取得し、口数に応じて不動産の賃料収入や売却益を受け取ります。信託受益権の評価には、現物不動産と同様の相続税評価額が適用されるため、「任意組合型」と同様に相続対策に有効です。土地や建物の不動産取得税はかからず、現物不動産の取得に比べ、登録免許税は1/5に軽減されます。また、事業者が倒産した場合でも信託による倒産隔離規定が適用されるため、差押などの倒産手続きから守られます。
信託受益権型のデメリットは、成熟した投資市場がなく、取扱事業者が少ないので換金性が高くないこと。また5~10年の長期運用を前提としている商品が多く、中途解約ができないことです。また、購入資金を借入で調達することが難しく、自己資金での投資となります。
その一方で、相続対策商品としてはメリットが多く、長期的な資産運用商品として注目を集めています。
信託受益権型の不動産小口化商品は、投資目的よりも相続効果が期待されている商品と言えるでしょう。次項で、そのメリットを詳しく解説します。
現金を相続した場合、その全てが相続税の対象となりますが、同じ金額で購入した不動産小口化商品(信託受益権型)を相続した場合は、土地の路線価と建物の固定資産税評価額をもとに「相続税評価額」が算定され、不動産購入価格から約70%~80%の圧縮効果が期待できます。仮に賃貸不動産を相続した場合は貸家評価減、貸家建付地評価減に加え、小規模宅地の特例も使えるケースもあり、更なるメリットが。また所得税においても、不動産小口化商品(信託受益権型)は不動産と同様に減価償却費を計上できるのでオススメです。
不動産を相続する時には、物件によって家賃収入や市場価値、相続税の評価額にも差があるため、平等に分配するのは困難です。そのため相続人が複数いる場合はトラブルになりやすいとされています。一方で、不動産小口化商品(信託受益権型)の場合、相続・贈与のタイミングで信託受益権を均等・均質に分けることができます。例えば、配偶者と子供が2人いる場合、配偶者に10口、子供それぞれに5口ずつ、というように割合に応じて口数で平等に分配することができます。物件ごとの相続税評価額に差がある不動産ではなく、均等・均質に分配できる不動産小口化商品(信託受益権型)を活用すれば、相続人の間での無用なトラブル回避につながります。
不動産投資を行った場合、物件の管理業務が発生します。不動産小口化商品(信託受益権型)を購入した際は、物件管理や運営は実績のある管理会社が実施する場合が多いのが特徴です。入居者の募集、家賃回収、清掃、退去管理などを一括で代行してもらえるため比較的に安定したキャッシュフローが見込めると言えるでしょう。忙しいサラリーマンや細かい管理業務が苦手な人でも、無理なく不動産投資できる点も、不動産小口化商品(信託受益権型)のメリットです。
エイブル信託では、こうした不動産小口化商品(信託受益権型)を活用したサービスをご提供しています。
インフレが見込まれる中、好条件の土地に比較的少額から不動産投資ができる商品として区分マンション投資がありますが、都心立地の区分マンションは“億ション”といわれるようになり、少額ではとても手が出せません。また、近年人気の相続対策だったタワーマンションは相続税評価の見直しがなされ、相続税評価額の圧縮効果が抑えられてしまいました。
信託受益権型の不動産小口化商品は、相続税評価額の圧縮効果が期待でき、相続人への均等・均質な財産分配が可能。資産承継先と配分を予め、契約で決めることも可能です。平均的な利回りは他の不動産証券化商品に劣るものの、相続対策の面では優秀な商品といえそうです。新しい資産継承の形として、信託受益権型の不動産小口化商品を検討してみてはいかがでしょうか?
この記事に関するお問合せ:エイブル信託(https://www.able-trust.co.jp/)