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令和5年(2023年)12月13日「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行され、空き家所有者の責務が強化されました。
法改正により、放置すると倒壊等のおそれがある「特定空家」に加え、窓や壁が破損している「管理不全空家」も市区町村からの指導勧告の対象となります。また、市区町村の指導に従わずに勧告を受けると固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなったり、報告拒否や虚偽の報告をすると過料が課されるといった不利益が発生する可能性があります。
ただし今回の改正には、今まで建て替えや改築ができなかった土地でも建て替え要件が緩和されるといったメリットが存在することも事実です。
今回は空き家法の改正について、弁護士監修のもと、空き家所有者の方に大きくかかわる4つの変更点、空き家を放置するデメリットや早期の対応で得られるメリットについて解説します。
「空き家を所有している」「今後、空き家を相続することになりそう」という方は、ぜひ参考にしてください。
監修=芝大門法律事務所 高橋 真司弁護士
慶応義塾大学卒業後、99年に弁護士登録・芝大門法律事務所へ入所。不動産紛争、近隣問題、債権回収、相続など多くの大家さんが悩むテーマを中心に取り扱う「不動産問題のプロ」。著書に「賃貸住宅の法律Q&A」(大成出版社・共著)ほか。 |
平成 26 年(2014年)に「空家等対策の推進に関する特別措置法」いわゆる「空き家法」(以下、空き家法)成立後、全国の空き家対策は着実に進展してきました。
国土交通省が令和4年(2022年)10月に公開した資料によると、市区町村がこれまで把握している管理不全の空き家は累計約50万戸あり、空き家法に基づく措置や対策により14万戸が除去や修繕されています。
その一方で、人口減少が進み、空き家の数は増え続けています。
総務省統計局が平成30年(2018年)行った調査によると、1988~2018年までの20年間で空き家の総数は1.5倍(576万戸から849万戸)に増加し、住居全体の13.6%を占めます。
そのうち賃貸または売却、(別荘やセカンドハウスといった)二次的利用がされていない住宅で、長期にわたって居住世帯が不在の、そのまま放置される可能性が高い「その他空き家」は349万戸存在します。その他空き家は所有者が管理する動機が弱いため、今後さらに増加していくと予想されています。
今までの法律では主に、放置すると倒壊等のおそれがある「特定空家」に対する措置を中心に規定が行われていましたが、今後は特定空家になる前の状態から対処していく必要があります。
そのため、空家等の「活用の拡大」、「管理の確保」、「特定空家等の除却等」の3本を柱として、空き家法の総合的な対策を強化することを目的に空き家法の改正が行われました。
空き家法によると、空き家は下記のように定義されています。
(定義) 第二条 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第十四条第二項において同じ。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。 |
また、国土交通省が公開している資料によると、空き家法の「居住その他の使用がなされていないことが常態である」という期間について、下記のような記載があります。
また、「居住その他の使用がなされていない」ことが「常態である」とは、建築物等が長期間にわたって使用されていない状態をいい、例えば概ね年間を通して建築物等の使用実績がないことは1つの基準となると考えられる。 |
このため、1年以上居住等の使用がなされていない場合は空き家に該当すると考えられます。
一方、空室は、主に集合住宅や貸しビルで、一時的に入居者やテナントが決まっておらず、賃借人やテナントを募集している部屋のことです。
国土交通省の調査では、マンションの場合「3か月以上空室であるもの」を空室と定めています。
一時的な空室(おおむね1年以内)は、空き家とは異なると考えてよいでしょう。
少子高齢化が進む日本では、空き家を相続したり、年配の家族が高齢者住宅や子の家に引越すことで、空き家の所有者がさらに増えることが予想されます。
空き家を管理せずに放置すると、下記のようなリスクがあります。
・崩壊、倒壊
・火災
・屋根や外壁の崩落
・雑草が生い茂る、樹枝が隣の敷地や道路にはみ出す
・景観が悪化する
・害獣や害虫の繁殖、悪臭が発生する
・不法投棄や不法侵入などが起こり、地域の治安が悪化する
近隣住民や通行人に損害を与えると、損害賠償責任に問われる可能性もあるため、空き家を所有することになったら放置しないようにしましょう。
空き家法の改正で、空き家の所有権がある方に大きくかかわる4つのポイントをご紹介します。
法改正により「特定空家」に加え、「管理不全空家」も市区町村からの指導勧告の対象となりました。
「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。 |
見た目で明らかに保安上危険または衛生上有害とわかる様子でなくても、今後そのような状態(特定空家)になることが予見される空き家を「管理不全空家」と呼びます。
たとえば、窓ガラスが割れたり、壁が破損したまま放置したり、雑草が生い茂っていると管理不全空家に指定されるおそれがあります。
特定空家、管理不全空家にならないようにするための管理方法はこちら
行動指針(所有者による空き家等の適切な管理について指針となるべき事項)|国土交通省
空き家のある市区町村から「特定空家」や「管理不全空家」としての指導を受け、従わずに勧告を受けると「固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)」が受けられなくなります。
戸建てやアパート、マンションなど住居を建てられる土地を「住宅用地」といいます。
通常、土地に対する固定資産税が課税される年の1月1日(賦課期日)において、住宅用地は税負担が大きく軽減されます。
小規模住宅用地の場合: 住宅1戸あたり200平方メートル以下の住宅用地(200平方メートルを超える部分は、200平方メートルまでの部分)は、固定資産税の課税標準額が、価格の6分の1になる ※都市計画税は3分の1になる 一般住宅用地の場合: |
管理不全空家として市区町村から指導を受けたのに状況を改善しないでいると、勧告を受けます。勧告を受けた管理不全空家の敷地は、特定空家と同様に固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなります。
つまり、空き家を管理せずに放置していると、固定資産税が最大6倍になってしまうおそれがあり、早ければ2025年3月の確定申告から影響が出るということです。
改正前の空き家法では、市区町村が特定空き家に対する助言や指導、勧告や命令を行うにあたって、その敷地内への立ち入り調査が認められていました。
しかし、外見だけでは状況が判断できないケースもあるため、改正後の空き家法では、市区町村が所有者の意向も把握できるよう、特定空家の所有者に対して新たに報告徴収ができるようになりました。
所有する空き家等について市区町村から報告を求められた場合、拒否したり虚偽の報告をすると20万円以下の過料が課される可能性があります。
市区町村が空き家の所有者に対して措置を命じても状況が改善されない場合、強制的な措置(代執行)が行われるケースがあります。
①助言または指導
→ ここで対応すれば、特定空家や管理不全空家の指定を解除できる
②勧告
→ここで対応しないと、固定資産税の減額措置の対象から除外される
③命令
→ ここで従わないと、最大50万円の過料に処される場合がある
④戒告
⑤代執行(行政代執行または略式代執行)
特定空家等の所有者に代わって行政が強制的な措置が行うことを「行政代執行」といいます。
また、所有者が特定できない状態で代執行が行うことを「略式代執行」といいます。
屋根や外壁が崩落しかけていたり、災害時など早急な対応が求められる場合、法改正により「緊急代執行」といって命令等の手続きを省略した代執行が行われるようになりました。
代執行が行われた場合、かかった費用はすべて空き家の所有者が負担することになります。
場合によっては、財産を差し押さえられたり、処分されて強制的に徴収されることもあります。
また法改正により、所有者不明時の代執行や緊急代執行が行われた場合は、裁判所の確定判決なしで、通用の代執行と同じように費用を徴収されるようになりました。
つまり空き家の所有者は、代執行を受け費用を徴収される可能性が高まったということです。
今回の法改正では空き家の「適切な管理」に加え「国・自治体の施策に協力する」という努力義務が追加されました。国や地方自治体の施策は、無視せず対応する必要があります。
空き家の処分に困っている、空き家を手放したいと考えている方は専門家にご相談ください。
今までは建築基準法などの制限によって、半分壁が落ちたような家でも接道の制限があるため建て替えられない、放置せざるを得ないといったケースがたくさんありました。
しかし、今回の空き家改正によって、今までは手が入れられなかった物件も建替や改築ができるようになった可能性があります。
市区町村が定める「空家等活用促進区域内」では、都道府県と連携して建築基準法などの規制の合理化を図り、空き家の用途変更や建て替え等が促進されるようになりました。
【参考サイト】空家等活用促進区域の設定に係るガイドライン|国土交通省
空き家を放置すると、下記のようなデメリットがあります。
・固定資産税がかかり続ける
・住めなくなる、売れなくなる
・管理不全空家化、特定空家化して地域や近隣の住居に迷惑をかける
人が住まなくなった空き家は劣化が早く、水回りや外壁が傷むと売却する際の資産価値が下がってしまいます。
また、塀や樹木が隣の家に倒れたり、家の一部が倒壊して近隣住民を傷つけてしまった場合、管理責任は空き家の所有者にあるため、損害賠償請求をされるおそれがあります。
空き家を放置するということは「法的なリスクを背負い続けている」とも言えるのです。
解体して跡地を広場や駐車場にしたり、新たな建物の敷地として活用します。
リフォームして売買用の住宅にしたり、用途替えをして店舗やカフェなどとして活用します。
被相続人(親や家族)が亡くなったと判明したときから3か月以内に家庭裁判所で「相続放棄」を行えば、空き家の所有者になることはありません。
早期に対応することで、近隣トラブルを未然に防ぎ、代執行や損害賠償といった経済的な負担を抑えられ、資産価値を維持したまま高く売れるといったメリットがあります。
空き家を所有するきっかけの過半数は相続です。
誰が家を相続するか決めかねて遺産分割協議がまとまらなかったり、使い道について家族で揉めてしまったりと、不動産の相続にはトラブルがつきものです。
家を自分で処分するか、「誰に相続させるか」について遺言書を作成して明確にしておくと、親世代の意思を反映できます。子世代は、親の意思を確認しておくとよいでしょう。
また、家の処分や売却にかかる費用を調べて、家族会議で事前に共有しておくと計画が立てやすいです。
ここで「空き家を相続した」「今後、空き家を相続する可能性がある」という方向けに、相続登記について説明しておきます。
空き家に限らず、家や土地を相続したら、不動産の登記名義の変更手続き「相続登記」が必要です。
令和6年(2024年)4月1日から、相続登記が義務化されました。
土地や建物を、相続によって取得したことを知った日または遺産分割の話し合いで取得した日から3年以内に相続登記をする必要があります。
※令和6年(2024年)4月1日以前に相続した不動産も、相続登記されていないものは義務化の対象となる(3年間の執行猶予あり)
正当な理由なく相続登記をしないでいると、10万円以下の過料が課される可能性があります。
不動産の名義を変更するには、法務局に申請する必要があります。
すぐに遺産分割がまとまらない場合、新設された「相続人登記申告」という手続きで義務を果たすことも可能です。
相続登記についてご不明な点は、お近くの法務局か登記が専門の司法書士や司法書士会にご相談ください。
【参考サイト】法務省:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~
また、相続した空き家の売却を検討している場合、期間限定で特別控除を受けられる制度をご紹介します。
被相続人が居住していた家屋およびその敷地を相続した相続人が、相続開始の日から3年を超える日が属する年の12月31日までに一定の条件を満たしてその家屋や土地を譲渡した場合、譲渡所得から3,000万円が特別控除されます。
また、一定の要件を満たした場合、被相続人が老人ホームに入所する直前まで居住していた場合も対象になります。
この制度の適用期間は、令和9年(2027年)12月31日までです。
【参考サイト】空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)|国土交通省
国は令和12年(2030年)までに、空き家の総数を400万戸程度に抑えることを目標に掲げており、今後もさらに法律が変わる可能性があります。
空き家所有者の方は法改正を意識し、早期に対応を進めることをおすすめします。
エイブルでは、不動産売買に関するサービスを通じて、将来にわたる不動産に関する不安を解消するだけでなく、必要に応じて専門家とも連携し、相続問題等に関するアドバイスも提供しています。
空き家の状態によって、売却や賃貸、建て替えや更地化して活用するなど、グループ力を活かして包括的なご提案をいたします。
所有する空き家について「どこから手をつければいいかわからない」「売却や活用について専門家に相談したい」という方は、ぜひご相談ください。