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【民法改正】連帯保証人制度の変更ポイントをわかりやすく解説!

賃貸経営の基礎
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#賃貸経営の知識をつけたい
【民法改正】連帯保証人制度の変更ポイントをわかりやすく解説!

2020年4月に施行された改正民法により、連帯保証人を含めた保証人に関するルールが大きく変わりました。

賃貸借契約の連帯保証人制度で入居者や保証人が有利になるような変更があるため、気になっている大家さんも多いのではないでしょうか。

ここでは、民法改正が賃貸や更新にどのような影響を与えるかを説明していきます。

2020年の民法改正、賃貸借契約の連帯保証人制度に影響が

民法改正2

2020年4月に行われた民法改正では、賃貸借契約の連帯保証人制度が変更になりました。

借主(入居者)が家賃を滞納した場合など、今までは連帯保証人がすべての責任を負うことが通例となっていました。しかし、今回の改正ではすべてではなく、大家さんと保証人の間で極度額、簡単にいうと負担する債務の限度額を決めることになります。

たとえば、大家さんと保証人の間で極度額を「100万円」と決めれば、何があったとしても連帯保証人は100万円までの責任しか負わないで済むということです。

ただし、火事などの損失があった場合は100万円の負担では収まらないため、妥当な極度額を設定しなくてはいけません。つまり、大家さんと保証人の間で折り合いが付く金額を設定するという手間が発生するのが、今回の民法改正なのです。

ただし、2020年3月31日までに締結された契約には影響はありません。

連帯保証人とは

連帯保証人とは、借主が家賃を滞納したり設備を壊したりしてしまった時に、 借主の代わりに債務を負担する人のことで、不動産賃貸においては必要不可欠な存在です。

民法改正前の連帯保証人は、借主が家賃や建物の修繕費を支払うことができない場合、それら全てを肩代わりしなければなりませんでした。たとえば借主が、もしタバコの不始末などでアパートを焼失させた場合、連帯保証人は大家さん側から多額の損害賠償を請求されてしまいます。

このように、 「一定の範囲に属する不特定の債務」について保証する契約を「根保証契約」といいます。連帯保証人になった時点では、将来どれくらいの債務が発生するかわからないため、連帯保証人になるリスクは非常に大きく、 人によっては連帯保証人を用意できないことも少なくありません。

そのため、2004年の改正で賃金等の債務に関しては、保証人が個人の場合は極度額を決めることが必要となりました。。

さらに、2020年の施行された改正民法では、賃金等債務に限らず、個人の根保証契約において極度額を設定することが明記されました。。極度額の定めのない個人の根保証契約は、無効となったのです。

「極度額」の義務化で連帯保証人の支払額が制限されるように

民法改正は行われましたが、連帯保証人には保証義務が生じます。ただし、改正前のようにすべての債務を負担しなくてはいけないというのではなく、改正後は極度額を双方の話し合いで決めることが義務づけられました。

「極度額」とは、連帯保証人の債務の限度額を指します。賃貸借契約においては、連帯保証人が立て替えなくてはいけない家賃や賠償額の限度額が極度額となります。極度額の金額には法的な制限はなく、大家さんと保証人の間で合意に至れば、10万円であっても100万円であっても問題ありません。極度額が決まったら、連帯保証人との契約書に金額を明記する必要があります。

また、入居者の過失による損害賠償等も極度額の対象となります。例えば、火災などで部屋の原状回復が難しい場合、連帯保証人には債務不履行の責任が生じます。この場合は、借家人賠償保険で補えない金額を、極度額の範囲で連帯保証人が 保証することになります。

極度額が法外な金額だと連帯保証人が付かなくなってしまう可能性があるので、契約期間を目安に、○月分というように負担できる額を設定するのがベストです。

大家さんが知っておくべき、改正民法の施行後における注意点

連帯保証人民法改正追加2

本民法改正は、オーナーにとっても影響があるものです。
ここでは、うっかり見落としてしまうこともある、大家さんが知っておくべき注意点を紹介します。

大家さんから連帯保証人への情報開示が必要になる

借主に依頼されて連帯保証人となった人は、大家さんに対して情報提供(借主の家賃の支払い状況など)を求めることができるようになりました。制定趣旨としては、極度額の設定が義務化されたことと同様で、連帯保証人が想定外の高額の債務を負うことを避ける狙いがあります。

このため大家さん側は、連帯保証人から上記の内容について質問を受けた場合には、その情報を連帯保証人へ伝える義務が発生します。

改正民法では次のように明記されています。

(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
第四百五十八条の二 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
引用:民法

借主が家賃滞納などの債務不履行を起こした場合であっても、もし大家さんが連帯保証人への情報提供義務を果たしていなかった場合には、連帯保証人に対して支払請求ができなくなる可能性があります。

改正民法の施行にともない義務化された項目をしっかりと把握し、借主・連帯保証人との三者間でお互いに義務をきちんと果たしてトラブルを防ぎましょう。

保証会社の利用も検討する

民法改正によって、極度額が導入されることで大家さんにとっては不利な条件で合意しなくてはいけなくなる可能性もあります。

入居希望者が後を絶たないような人気物件であれば「賃貸借契約を結ばない」という選択肢もありますが、早く空室を埋めたいという大家さんであれば、多少不利でも合意するしかないと諦めてしまうかもしれません。

しかし、相場より少ない極度額では、負債額をまかなえない可能性もあるので妥協するのはやめましょう。

連帯保証人の代わりに家賃保証会社を利用するという手段があります。保証会社であれば、極度額の設定をする規定はないので、大家さんが損をする契約にならないよう利用を検討してください。

まとめ

改正民法の施行後は、「極度額」の義務化に加え、次のような情報提供義務が新設されています。

・連帯保証人から大家さんへ、借主の家賃等支払い状況についての情報提供請求が可能に
・請求があった場合には、大家さんから連帯保証人へ、借主の家賃等支払い状況についての状況開示義務

連帯保証人は、借主が契約を履行しなかったときに大家さんが不利益を被らないための保険となるものです。改正民法の施行により、連帯保証人がいても極度額の範囲でしか保証がないため、以前より厳しい状況になってしまう可能性もゼロではありません。

今後は連帯保証人に代わる担保が必要になってくるかもしれませんので、民法改正に詳しい不動産会社などに相談しながら、敷金の見直しや保証会社の利用などリスク回避ができる方法を検討することをおすすめします。また、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書(改正民法対応)」をチェック するなど、極度額や連帯保証人について勉強しておくと安心です。

※この記事は 2020年12月に公開した記事を2023年7月に追記したものです

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