借家人賠償責任保険で賃貸経営のリスクに備える
賃貸物件に賃借人が入居するときは、火災保険に加入してもらうの […]
地震大国である日本。各地で地震が発生し、巨大地震が起こる可能性も高まっています。
賃貸経営者は地震に対してどのような対策をとるべきでしょうか。
そこで必要となってくるのが地震保険です。地震保険は、火災保険では補えない地震による火災や津波への被害をカバーできます。
今回は、賃貸経営に欠かせない地震保険についての基礎知識や補償内容、加入の際の注意点についてご紹介します。
目次
結論から述べると、賃貸経営において地震保険への加入は必要です。
なぜなら、地震による火災や津波で建物が被害を受けた場合、火災保険だけでは補償がされないからです。
そのため、甚大な被害をもたらした2011年の東日本大震災をきっかけに、地震保険への加入率は増加傾向にあります。
損害保険料率算出機構によると、地震保険に加入している世帯は2019年に33.1%、火災保険と合わせて契約する付帯率は66.7%にのぼります。
万が一に備え加入をしておきたいものですが、地震保険にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
地震保険には、以下3つのメリットがあります。
1.地震の被害に備えられる
2.日本政府による再保険
3.節税対策になる
地震保険の最大のメリットは、地震が原因の津波や火災による被害への補償です。先述したように、火災保険だけでは地震による被害を補償することができません。火災保険とセットで加入することで、万一の際に備えることができます。
さらに地震保険は政府が関与しています。そのため、巨大地震により民間企業だけでは対応が困難な場合でも、国からの再保険により迅速に補償を受けることができます。
また賃貸物件を住宅と併用している場合、所得控除を受けられるため、節税対策にもなります。
地震保険のデメリットは以下の3つです。
1.地震保険単体では加入できない
2.保険金だけでは建物の建て直しはできない
3.被害内容によっては保険金の受取額が少ない
まず前提として、地震保険は火災保険に付帯して契約する必要があるため、地震保険単体では契約できません。
また2つ目のデメリットとして、保険金額の上限により補償額が決められている点です。補償額の上限は建物が5,000万円、家財は1,000万円までです。そのため保険金だけでは建物を建て直すことができません。
3つ目のデメリットは、被害レベルに応じて保険金の支払額が変わることです。たとえ損害が出ても、被害レベルによっては保険金が少なかったり、支払われなかったりする場合もあることを覚えておきましょう。
地震保険の損害区分は以下の4種類に分けられています。
損害区分 | 建物 | 保険金支払額 |
全損 | 主要構造部(屋根、柱、土台、壁)の損害額が、時価額の50%以上。 または焼失もしくは流失した床面積が、その建物の延床面積の70%以上。 |
地震保険の保険金額の100%
(時価額が限度) |
大半損 | 主要構造部(屋根、柱、土台、壁)の損害額が、時価額の40%以上50%未満。 または焼失もしくは流失した床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満。 |
地震保険の保険金額の60%
(時価額の60%が限度) |
少半損 | 主要構造部(屋根、柱、土台、壁)の損害額が、時価額の20%以上40%未満。 または焼失もしくは流失した床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満。 |
地震保険の保険金額の30%
(時価額の30%が限度) |
一部損 | 主要構造部(屋根、柱、土台、壁)の損害額が、時価額の3%以上20%未満。 または建物が床上もしくは地盤面より45cmを超える浸水。 |
地震保険の保険金額の5%
(時価額の5%が限度) |
※注釈:保険契約が2017年1月1日以降の契約の場合
地震保険額は火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内で決めることが可能です。
ただし上限は建物が5,000万円、家財が1,000万円となります。そのため、地震保険だけでは建物の建て直しができません。
しかし、地震保険に特約を上乗せすることで、建物の再建など損害を補うことができます。特約の内容や金額は保険会社によって異なるため、賃貸物件に適した特約を付けましょう。
地震保険は単体ではなく、火災保険とセットで加入します。別々の保険会社では加入できないため、同じ保険会社で加入しましょう。現在火災保険のみ加入している場合でも、契約期間中にあとから地震保険に加入することが可能です。
なお地震保険の契約期間は最長5年となるため、5年もしくは1年更新となります。
入居者のためにも安全の対策として加入しておきたい地震保険ですが、節税対策にもなります。
地震保険は不動産収入の必要経費になります。所有しているアパートが賃貸併用住宅の場合、自宅部分を地震保険料控除、事業用部分を損害保険料として経費に計上できます。
地震保険は以下の場合に限り、保険料控除を受けることができます。
・契約者本人が居住
・契約者と生計を共にする配偶者もしくは親族が居住
そのため、賃貸オーナー自身や家族が居住していないと保険料控除は受けられません。居住をしておらず、投資用に賃貸経営をしている方は注意が必要です。
火災保険は火事だけでなく、落雷や台風などさまざまな災害をカバーします。アパート経営には地震保険とともに必ず加入しておきたい保険です。
また地震保険と似たようなものに「地震共済」があります。地震保険が民間の保険会社が運営しているのに対し、地震共済は非営利団体が運営しています。ただし、地震共済は加入する共済により補償内容や掛け金が異なり、また特定の職業や地域に限定している場合があるので注意が必要です。
いつどこで発生するか分からない地震に対し、被害を補償してくれるのは地震保険だけです。地震保険では建物を建て替えることはできませんが、生活を立て直すための保険となります。万一の備えとしてリスクを少しでも回避するために、地震保険への加入をおすすめします。