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【税理士監修】賃貸住宅の相続|手続きの流れや相続税の計算方法を解説

相続・節税
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#賃貸経営の知識をつけたい
【税理士監修】賃貸住宅の相続|手続きの流れや相続税の計算方法を解説

賃貸住宅を経営している方の多くは、相続について1度は考えたことがあるのではないでしょうか。親が賃貸住宅を経営している子もまた、漠然と「いずれは相続する日がくる」と考えていることでしょう。

今回は、賃貸住宅の相続をスムーズに進められるよう、相続手続きの大まかな流れや、賃貸住宅の相続税評価額に関する税制について紹介します。賃貸住宅の相続をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

監修=辻・本郷 税理士法人

平成14年4月設立。東京新宿に本部を置き、日本国内に90以上の拠点、海外7拠点を持つ、国内最大規模を誇る税理士法人。

税務コンサルティング、相続、事業承継、医療、M&A、企業再生、公益法人、移転価格、国際税務など各税務分野に専門特化したプロ集団。

弁護士、不動産鑑定士、司法書士との連携により顧客の立場に立ったワンストップサービスと、あらゆるニーズに応える総合力をもって多岐にわたる業務展開をしている。

公式サイト:https://www.ht-tax.or.jp

賃貸住宅の相続手続きの流れ

賃貸住宅の相続において、大まかな流れは以下のとおりです。

1.相続人の確定、遺言書の確認、遺産分割協議
2.相続財産の把握
3.相続登記の申請

それぞれの手続きを詳しく見ていきましょう。

1.相続人の確定、遺言書の確認、遺産分割協議

まず、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本を市区町村役場から取り寄せて、法定相続人の範囲を確認します。

次に、遺言書の有無を確認しましょう。自筆証書遺言が見つかった場合は、下記のサイトをご参照ください。

【参考サイト】遺言書の検認|裁判所

遺言書がない場合や、相続人で相談して遺産を分けることになった場合、相続人全員で遺産分割協議を行います(相続人が1人の場合は不要)。

遺産分割協議は、合意に至るまで一定の時間がかかります。遺産分割には期限がありませんが、相続税の申告期限(相続開始日から10か月)以内に遺産分割がまとまらない場合、税務上のメリットが受けられなくなることもあるので注意しましょう。

話し合いで遺産分割できない場合、家庭裁判所の調停や審判で分割することになる可能性があります。遺産分割がまとまらないときは、相続に強い弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。

2.相続財産の把握

賃貸住宅の相続には、相続財産を把握することが重要です。相続の対象は土地や建物、有価証券や現金に加え、借入金などの負債も対象となります。

負債の方が多いなど、相続人が経営を引き継ぎたくない場合には相続放棄という選択も可能です。相続放棄は相続が発生してから原則3ヶ月以内に行う必要があります。

【参考サイト】相続の放棄の申述|裁判所

ただし、不動産の管理方法を見直すことで収支の改善につながったり、賃貸住宅を売却することで負債を完済できたりする可能性もあります。「負債があるので、親の不動産を相続すべきか迷っている」という方は、相続対策に強い税理士や不動産会社にご相談ください。

3.相続登記の申請

遺産分割協議や遺言書などで、賃貸住宅を相続する人が決まったら、管轄の法務局で相続登記(相続する不動産の不動産登記簿の名義変更)を申請する必要があります。

令和6年(2024年)4月から、相続登記が義務化されました。そのため、相続したことを知った日から3年以内に登記をする必要があります。正当な理由なく義務に違反する場合、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意しましょう。

また、相続登記の義務化に伴い「相続人申告登記」という新しい制度が創設されました。期限内(3年以内)の相続登記の申請が厳しい場合、簡易的な手続きで相続登記の申告義務を果たせます。ただし、「遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできない」「相続した不動産を売却したり、抵当権を設定したりする場合は別途相続登記の申請が必要」といった留意点があるため、直ちに遺産分割や相続登記の申請が厳しい場合などにご活用ください。

【参考サイト】相続人申告登記について

相続登記は、自分で行うか、司法書士や弁護士などに代行を依頼することも可能です。不動産の価額や手続きの内容に応じて、下記の費用がかかります。

①登録免許税(相続する不動産の固定資産税評価額 × 0.4%)
②戸籍謄本や住民票の写しなど、各種証明書の取得費用(数千円程度)
③弁護士や司法書士に支払う報酬(相場は10万円程度から)

【参考サイト】不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~|法務省

賃貸住宅の相続に必要な書類

賃貸住宅の相続に必要な書類は以下のものがあります。

被相続人に関する書類・資料

被相続人に関する資料としては、出生から死亡までに至る全ての戸籍謄本、住民票の除票(本籍が記載されているもの)などが必要です。

相続人に関する書類・資料

相続人に関しては、相続人全員の戸籍謄本(被相続人が亡くなった日以降のもの)、賃貸住宅を相続する人の住民票(本籍地が記載されているもの)、当該不動産の登記事項証明書、賃貸住宅の固定資産評価証明書など。

遺言がない場合は、遺産分割協議書(自分で作成するか、専門家に作成してもらったもの)および相続人全員の印鑑証明書などが必要です。

賃貸住宅の相続税の計算方法

相続2

相続税の計算方法は以下のとおりです。

①課税の対象となる額を求める
②基礎控除額を引く
③相続税の総額を計算

相続税は下記のように計算されます。

相続税の計算方法

①課税の対象となる額を求める

遺産総額は、(現預金や土地、建物などの「プラスの財産」+死亡保険金や死亡退職金などの「みなし財産」+相続開始3年以内の贈与)-(債務や葬儀費用などの「マイナスの財産」)で求められます。

②基礎控除額を引く

①で課税の対象となる額を求めたら、そこから基礎控除額を引きましょう。基礎控除額は「3000万円+600万円 × 法定相続人の数」で求められます。画像のDの部分(相続税対象となる財産)がマイナスだった場合、相続税が課税されず申告も必要ありません。

③相続税の総額を計算

法定相続人で分けた場合の金額を相続人ごとに算出し、それぞれの金額に税率をかけて計算します。法定相続分については、下記のページをご参照ください。

【参考サイト】No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

最後に、算出した相続税額を実際に相続した割合で振り分ければ、各相続人の納付税額を求められます。ここからは、相続税額の求め方を詳しく解説していきます。

相続税額の求め方

相続税額は、以下の流れで計算します。

1.土地と建物の相続税評価額を求める

土地の相続税評価額 ×(1 – 借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

建物の固定資産税評価額 × (1-借家権割合×賃貸割合)

2.1の土地と建物の相続税評価額を足し、賃貸アパートやマンションの相続税評価額を求める

3.そのほかの遺産と2の相続税評価額を足す

4.3から相続税の基礎控除を差し引いて、課税遺産総額を計算する

5.相続人の数や法定相続割合によって、最終的な相続税額が決まる

マンションの場合、敷地権割合が関わってきます。敷地権割合は登記を見ることで確認できます。令和6年(2024年)1月1日以降の相続・贈与より、居有用の区分所有財産の評価方法が変わりました。評価方法の概要や計算方法については、下記のサイトをご参照ください。

【参考サイト】「居住用の区分所有財産」の評価が変わりました|国税庁

小規模宅地等の特例とは

「小規模宅地等の特例」といって、被相続人(亡くなった方)が所有していた土地について相続税評価額が減額される制度があります。

被相続人が住んでいた宅地で、配偶者又は一定の条件を満たす親族が取得した場合には、330㎡までの土地面積に対して、80%の減額となります。

また、被相続人の貸付事業用の土地で「貸付事業用宅地等」に該当する場合、200㎡までの土地に対して50%の減額となります。ただし、貸付事業用宅地が入居者募集をしていない空き家や長期間空室になっている場合、減額されないことがあります。

さらに、平成30年の税制改正にて、相続開始前(被相続人が亡くなる)3年以内に貸し付けた土地については、貸付事業用宅地等に該当しなくなる場合があります。該当性の判断については税理士に確認しましょう。

賃貸住宅の相続は早めの準備が大切

今回は、賃貸住宅の相続をスムーズに進められるよう、相続に関しての大まかな流れや、相続税の計算方法、賃貸住宅の相続税評価額に関する税制についてご紹介しました。

ご家族など被相続人が亡くなられた後は、相続財産の把握や遺産分割の協議など、慎重に検討すべきことがたくさんあります。相続税申告期限までの10か月という短い期間で行われなければなりません。「誰が承継するか、解決すべきことはないか」など早めに準備を進めましょう。

エイブルでは、信頼できる税理士と連携し、相続や税金に関する相談も受け付けています。「賃貸経営を引き継ぐか売却するかで迷っている」という方も、お気軽にご相談ください。お問い合わせフォームはこちら

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